冬菜かしこの「小学生、中学生と遊んでみたり、学んでみたり」の日々

二人娘と一緒に遊んで、学んで、楽しんでいるアラフィフ小学生ママの記録です。

【エッセイ】お花見の季節

小学校が春休みに入り、二人娘と平日をまったりと楽しんでいる。

でものんびりするだけでは、物足りたいのが遊び盛りの子供と言うもの。

「どっか、行きたーい!」との合唱にまけて、

昨日は近くの大型ショッピングモールに行ってきた。

毎日自転車で、このモール内のスポーツジムに通っている私は、

最短距離で行けるルート、というものを知っている。

私と二人娘の自転車ならば、そのルートを通るのが一番良いだろうと思っていた。

 

でも。ふと。

「桜の季節だよなあ」との思いが胸をよぎった。

今の時期は、近くの大きな公園で、

桜の木の下でお花見をしている人々が大勢いるだろう、と思った。

この公園は、いわゆる日本の小さな公園ではなく、

外国のような広い敷地の、高木がいくつも影を作るような、

そんな公園なのだ。

毎年お花見の季節には、駐車場が満車状態で、

車が右往左往するような、そんな場所なのだ。

 

「あの公園の近くを通ると、たぶん、露店で買い食いもするだろうな」

そんな風に予想できた。

つい三日前、家族で住宅展示場で開かれた、

ワークショップやフードショップなどが並ぶイベントに行き、

いろいろ買ってあげたばかり。

今週末にはどうしても県外に家族4人で行かなくてはいけない用事もあり、

大型出費が予想される。

 

今、出費したら、痛い。

出来るなら、今日の出費は最小限に抑えたい。

そんな風に思いました。

 

でも。

結局、満開の桜の待っている公園の近くを通るルートを選び、

二人娘が「あっ!ママ、お花見やってるよ!行こうよ!」

と言うのを聞いて、

「ほらね」と思いながら、

「行ってみようか」

と促して、3人で公園へと入っていった。

 

今の出費は、家計的に痛いの。

なのに、どうしてこの「桜ルート」を選んでしまったのか。

この道を選べば、おのずと、桜満開の公園に足を踏み入れ、

その結果「露店で買い食い」コースまっしぐらだと、

分かり切っていたはずなのに。

頭ではしないほうがいいと分かっていることを、

どうして敢えてやってしまったのか。

 

たぶん、それは「お花見の季節」だから。

短い期間しか見られない、満開の桜の季節だから。

今週末は県外の用事があるから、

今年はこの公園で家族4人でお花見に来ることはできないと、

分かっていたから。

 

露店の店先で、500円のイカ焼きや、700円の牛肉の串焼きの、

その値段の高さにひるんでも、

「何食べようか?」と平然とした声で言い、

子供たちにふるまったのも、

全てはこの満開の桜のなせるわざ。

 

だって。

小学生のお花見は、長女にとっては今年と来年、

次女にとってもあと片手で足りるほどしかないのだから。

 

ひとまず買い食いの前に、桜の小道を三人でそぞろ歩いていった。

頭上の桜を見て回る私、

きょろきょろと周りを見て回る二人。

「桜を見なさいよー、お花見何だからー」と言う私に、

「見てるよー」と桜じゃない方向をきょろきょろしながら言う二人。

 

まあ、いっかと思いながら歩いていくと、

1、2歳の幼児を抱えながら、

写真を撮ろうとしている家族がいて。

パパさんが手を目いっぱい伸ばして、

3人家族の写真を撮ろうとしていた。

 

「あれじゃ、自撮り感が満載の写真になるんじゃない?」

と思って「私、撮りましょうか?」と聞くと、

断るのかと思いきや、気持ちよく、

「あ、いいですか?このボタン押すだけです」

と言って下さって。

そのまま写真を二枚撮ってあげたりした。

 

こういう時、小学生を連れていると、

「普通の良い人」感が出て、

わりと親切心を受け入れてもらいやすいように思う。

ありがとうと、言ってもらって、

私がうれしく思っていると、長女が、

「お母さん、いい人だね」と褒めてくれるので、

ちょっと照れ隠しに、

「いやいや、お母さんは、性格悪いのよ。今のはたまたま」なんて言いながら、

ちょっと顔がにやけたりして。

そんななんでもないことが、妙にうれしかったりもして。

 

桜並木の端まで歩き、小さい橋を渡って向こう岸に行き、

折り返してまた桜並木をそぞろ歩いた。

予定通り、三人で露店に並び、

お目当てのものを選んで買い、

小上がりになっている石段の上に腰かけて、

それぞれがいただいた。

 

長女は牛タン串焼きをほおばり、

次女はイカ焼きを一所懸命かぶりつき、

私はゲソ焼きを噛んで、

三人で美味しく買い食いした。

決してお安くはない露店の買い食いは、

それでもそこそこ元が取れたような、

そんな楽しさを私たちの胸に残してくれた。

「海の家の焼きそばはうまい」

と誰かが言っていたその理論通り、

「花見の露店のイカ焼きはうまい」

そんな風に思えた。

 

桜並木で桜を見て、

露店で買い食いしお腹を満たし、

調子づいた二人は「遊具で遊ぶー」と言って駆け出し、

あっというまに大きい総合遊具で遊び始めた。

 

「こんなことなら、暇つぶしに本でも持ってくればよかった」

手持無沙汰になった私は、仕方なく二人の様子を見ていた。

そして、ほんの7、8年前は、紙おむつやら粉ミルクやら、

大きなマザーズバックを持って、お花見をしていたのを思い出した。

お出かけはいちいち大荷物で、

「一泊旅行ですか?」くらいの量の荷物を持って、

移動していたことを思い出す。

 

ああ、そうか。

今、ブログを書いていて、分かった。

私が、「写真撮りましょうか?」と言ったのは、

そこに昔の自分を見たからなのね。

何気ない家族の一場面だったけれど、

毎日毎日必死に子育てをして、

この公園でお花見をすることがどんなに大変か、

よく分かっているからなんだね。

 

どんなにたくさんの本を読んでも、

どんなにたくさんの人の講演を聞いても、

どんなにたくさんのテレビや映画を見ても、

決して分からない子育ての大変さを、

経験として分かっているからなんだね。

 

だとしたら、自分が苦労して子育てを経験したことも

決して無駄ではなかったと、そんな風に思える。

子育ての人の苦労が分かる自分が、

少しいいなと思えたりする。

私以上に、もっと子育てに苦労している方も大勢いるかもしれない。

でも、少なくとも、「子育てはそんな甘いもんじゃない」

と分かっていることは、大事なことなんじゃないかと思ったりするのだ。

 

総合遊具でひとしきり遊んだ二人娘が、

「じゃあ、○○(大型ショッピングモール)に行こうかー」

と嬉しそうに私の元に帰ってきた。

「うん、行こうか」

私もつられて笑顔で答える。

ショッピングモールで、三人でランチにパンを買って食べて、

また出費だなあ、大変だあ、と頭の隅で思っている。

 

でも。

今日のお花見は、「べつばら」。

お花見なんだから仕方ない。

春休みに三人でお出かけしたかった娘たちの、

今日は特別な一日だったのだ。

 

「明日から、また家計を引き締めて、がんばっていこー!」

そんな風に思いながら、三人で自転車にまたがり、

ショッピングモールへと向かった。

春の穏やかな暖かさの中、

こころをぽかぽかにして、

自転車のペダルも軽く、走っていった。

ああ、楽しかった。