小学校が春休みに入り、二人娘と平日をまったりと楽しんでいる。
でものんびりするだけでは、物足りたいのが遊び盛りの子供と言うもの。
「どっか、行きたーい!」との合唱にまけて、
昨日は近くの大型ショッピングモールに行ってきた。
毎日自転車で、このモール内のスポーツジムに通っている私は、
最短距離で行けるルート、というものを知っている。
私と二人娘の自転車ならば、そのルートを通るのが一番良いだろうと思っていた。
でも。ふと。
「桜の季節だよなあ」との思いが胸をよぎった。
今の時期は、近くの大きな公園で、
桜の木の下でお花見をしている人々が大勢いるだろう、と思った。
この公園は、いわゆる日本の小さな公園ではなく、
外国のような広い敷地の、高木がいくつも影を作るような、
そんな公園なのだ。
毎年お花見の季節には、駐車場が満車状態で、
車が右往左往するような、そんな場所なのだ。
「あの公園の近くを通ると、たぶん、露店で買い食いもするだろうな」
そんな風に予想できた。
つい三日前、家族で住宅展示場で開かれた、
ワークショップやフードショップなどが並ぶイベントに行き、
いろいろ買ってあげたばかり。
今週末にはどうしても県外に家族4人で行かなくてはいけない用事もあり、
大型出費が予想される。
今、出費したら、痛い。
出来るなら、今日の出費は最小限に抑えたい。
そんな風に思いました。
でも。
結局、満開の桜の待っている公園の近くを通るルートを選び、
二人娘が「あっ!ママ、お花見やってるよ!行こうよ!」
と言うのを聞いて、
「ほらね」と思いながら、
「行ってみようか」
と促して、3人で公園へと入っていった。
今の出費は、家計的に痛いの。
なのに、どうしてこの「桜ルート」を選んでしまったのか。
この道を選べば、おのずと、桜満開の公園に足を踏み入れ、
その結果「露店で買い食い」コースまっしぐらだと、
分かり切っていたはずなのに。
頭ではしないほうがいいと分かっていることを、
どうして敢えてやってしまったのか。
たぶん、それは「お花見の季節」だから。
短い期間しか見られない、満開の桜の季節だから。
今週末は県外の用事があるから、
今年はこの公園で家族4人でお花見に来ることはできないと、
分かっていたから。
露店の店先で、500円のイカ焼きや、700円の牛肉の串焼きの、
その値段の高さにひるんでも、
「何食べようか?」と平然とした声で言い、
子供たちにふるまったのも、
全てはこの満開の桜のなせるわざ。
だって。
小学生のお花見は、長女にとっては今年と来年、
次女にとってもあと片手で足りるほどしかないのだから。
ひとまず買い食いの前に、桜の小道を三人でそぞろ歩いていった。
頭上の桜を見て回る私、
きょろきょろと周りを見て回る二人。
「桜を見なさいよー、お花見何だからー」と言う私に、
「見てるよー」と桜じゃない方向をきょろきょろしながら言う二人。
まあ、いっかと思いながら歩いていくと、
1、2歳の幼児を抱えながら、
写真を撮ろうとしている家族がいて。
パパさんが手を目いっぱい伸ばして、
3人家族の写真を撮ろうとしていた。
「あれじゃ、自撮り感が満載の写真になるんじゃない?」
と思って「私、撮りましょうか?」と聞くと、
断るのかと思いきや、気持ちよく、
「あ、いいですか?このボタン押すだけです」
と言って下さって。
そのまま写真を二枚撮ってあげたりした。
こういう時、小学生を連れていると、
「普通の良い人」感が出て、
わりと親切心を受け入れてもらいやすいように思う。
ありがとうと、言ってもらって、
私がうれしく思っていると、長女が、
「お母さん、いい人だね」と褒めてくれるので、
ちょっと照れ隠しに、
「いやいや、お母さんは、性格悪いのよ。今のはたまたま」なんて言いながら、
ちょっと顔がにやけたりして。
そんななんでもないことが、妙にうれしかったりもして。
桜並木の端まで歩き、小さい橋を渡って向こう岸に行き、
折り返してまた桜並木をそぞろ歩いた。
予定通り、三人で露店に並び、
お目当てのものを選んで買い、
小上がりになっている石段の上に腰かけて、
それぞれがいただいた。
長女は牛タン串焼きをほおばり、
次女はイカ焼きを一所懸命かぶりつき、
私はゲソ焼きを噛んで、
三人で美味しく買い食いした。
決してお安くはない露店の買い食いは、
それでもそこそこ元が取れたような、
そんな楽しさを私たちの胸に残してくれた。
「海の家の焼きそばはうまい」
と誰かが言っていたその理論通り、
「花見の露店のイカ焼きはうまい」
そんな風に思えた。
桜並木で桜を見て、
露店で買い食いしお腹を満たし、
調子づいた二人は「遊具で遊ぶー」と言って駆け出し、
あっというまに大きい総合遊具で遊び始めた。
「こんなことなら、暇つぶしに本でも持ってくればよかった」
手持無沙汰になった私は、仕方なく二人の様子を見ていた。
そして、ほんの7、8年前は、紙おむつやら粉ミルクやら、
大きなマザーズバックを持って、お花見をしていたのを思い出した。
お出かけはいちいち大荷物で、
「一泊旅行ですか?」くらいの量の荷物を持って、
移動していたことを思い出す。
ああ、そうか。
今、ブログを書いていて、分かった。
私が、「写真撮りましょうか?」と言ったのは、
そこに昔の自分を見たからなのね。
何気ない家族の一場面だったけれど、
毎日毎日必死に子育てをして、
この公園でお花見をすることがどんなに大変か、
よく分かっているからなんだね。
どんなにたくさんの本を読んでも、
どんなにたくさんの人の講演を聞いても、
どんなにたくさんのテレビや映画を見ても、
決して分からない子育ての大変さを、
経験として分かっているからなんだね。
だとしたら、自分が苦労して子育てを経験したことも
決して無駄ではなかったと、そんな風に思える。
子育ての人の苦労が分かる自分が、
少しいいなと思えたりする。
私以上に、もっと子育てに苦労している方も大勢いるかもしれない。
でも、少なくとも、「子育てはそんな甘いもんじゃない」
と分かっていることは、大事なことなんじゃないかと思ったりするのだ。
総合遊具でひとしきり遊んだ二人娘が、
「じゃあ、○○(大型ショッピングモール)に行こうかー」
と嬉しそうに私の元に帰ってきた。
「うん、行こうか」
私もつられて笑顔で答える。
ショッピングモールで、三人でランチにパンを買って食べて、
また出費だなあ、大変だあ、と頭の隅で思っている。
でも。
今日のお花見は、「べつばら」。
お花見なんだから仕方ない。
春休みに三人でお出かけしたかった娘たちの、
今日は特別な一日だったのだ。
「明日から、また家計を引き締めて、がんばっていこー!」
そんな風に思いながら、三人で自転車にまたがり、
ショッピングモールへと向かった。
春の穏やかな暖かさの中、
こころをぽかぽかにして、
自転車のペダルも軽く、走っていった。
ああ、楽しかった。